「いごっそう」と「はちきん」の塾 後編
土佐人の気質(かたぎ)を表す言葉に「いごっそう」というのがあります。頑固一徹で、こうと決めたらてこでも動かない、ただし協調性や柔軟性にはなはだしく欠け、人の話を聞かず、自説にあくまでもこだわる、っていう感じの土佐特有の性格です。「いごっそう」の女性版が「はちきん」で男勝りの肝っ玉で、どんどん自分の道を切り開いていく前向きで明るく朗らかな女性のことを言います。これもまた、独自性を重んじるあまり、人の考えを聞き、取り入れて、自らを高めていこうとするところに欠けています。
そんな「いごっそう」と「はちきん」が集まった土佐の高知の「くろしお進学会」ではありますが、みんなでお互いに足りないところは補い合い、助け合って、教え諭し合って、すこしずつでも懐(ふところ)の広い人間になるように切磋琢磨してまいりました。
頑固でも「情に厚い」という特徴もあり、会員塾にいったんことが起これば、我が事として受け止め、誠心誠意協力を惜しまないという面も持ち合わせています。ある年には、会員塾の一人が「脳溢血」で倒れ、入院を余儀なくされた際には、会員塾の有志たちが日替わりでピンチヒッターとして教壇に立ち、3ケ月間代講をこなし、その塾を見事存続させたというエピソードもあるのです。
会の発足当初の平均年齢は41歳でしたが、現在の会員の平均年齢は53歳となっています。塾業界の変遷も激しく、「くろしお進学会」も浮沈を繰り返しながら齢(よわい)を重ねて参りました。40代から50代ともなると、親は弱りこの世を段々と去り、自分の心と体も徐々に衰えてきます。
実際、糖尿病、脳卒中に倒れた方々もいらっしゃいます。今でも塾稼業と闘病の両立に悪戦苦闘する方々も少なくありません。塾や自宅を火事でなくされた方々、連れ添いに白血病で先立たれた女性会員の方もいらっしゃますし、経営難から家族関係を壊した方もいらっしゃいます。みなさん、のっぴきならぬ人生の難題を抱えておられます。私とて同じでして、数年前には「うつ病」を経験しました。
そんな窮地にあってこそ、「くろしお進学会」で育んできた人間関係、固い絆は本当に活きてきました。苦しくてめげそうになる、人生の逆境に立たされた時、孤独に打ち震え、一人もがき苦しむのではなく、理解しあい、支えあい、励ましあうことのできる、心の通じ合った仲間の存在は、生きる希望や勇気を私たちに与えてくれるのです。
若い頃ではなく、40代・50代でまた新たなる「知己(ちき)」を得られるっていうのは、本当に稀有(けう)なことですし、この上ない人生の喜びであります。「くろしお進学会」のメンバーたちはみな、「いごっそう」「はちきん」ではありますが、人情に厚く、人との出会いに敏感な、心豊かな人間であります。平均年齢はかなり高くはなりましたが、向上心・向学心に燃える心の炎はいささかも衰えることはありません。
本日もその熱い想いを胸に、皆様との研修会の一時を実りあるものにしようと思い、自塾のこれからの運営に活かすことのできる something new を求めて、そして同じ塾稼業を生業(なりわい)としている素晴らしい人物との出会いを夢見ているのです。
どうぞよろしくお願いいたします。
by kururin
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コメント
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くろしお進学会の様子がよくわかりますね。
ご苦労様でした。
それにしても、コメントはどうすれば書けるのか忘れてしまって、方法を見つけるのが大変でした。
ホントに使いづらいヨ。
投稿: izutch | 2007年11月 5日 (月) 17時37分