こい話し8
建二と里美の帰る時刻が同じになったときがあった。大学のキャンパスから下の駅まで歩いて行った。
「この前たいへんやったね」と里美が切り出した。
「先生、授業ができたと喜んでいたよ」
建二はそのことには触れず、「その後、治とはどう?」と言って、いらんことを聞いてしまったと後悔した。
「この前は姫路城に行ってくれてありがとう」と里美が応じた。
「僕も姫路城は初めてやったからよかった」と変な答え方をしてしまった。
「お母さんが、建二君のこと、いい人、と言っていたよ」
建二はそれを聞いて、里美が自分のことをお母さんによく言っているからだろうと解釈した。
駅に着いて、電車に乗る里美を見送ってから、建二は歩いて下宿まで帰っていった。
この物語はフィクションであることをお断りしておきます。
by ダジャマン
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